過敏性腸症候群

  • 下痢を繰り返すが内科では異常がないと言われてしまった。
  • 下痢が怖くて外食や外出を避けがちになる。
  • 不安感から排便しておこうとして過剰に排便回数が多くなる。

どんな病気か

どんな病気か

下痢型の過敏性腸症候群も当院で多い病気です。
過敏性腸症候群とは、大腸や小腸に原因となる異常が見つからないのに、便通異常と腹部症状が続く病気です。
英語では、Irritable Bowel Syndrome(IBS)といいます。
下痢型は、緊張場面や乗り物の中で、頻回に腹痛や排便したい気持ちが高まってトイレに行かなければならなくなるものです。
IBSには、他に便秘が主症状の便秘型、ガスが多くなるガス型などがあり、それぞれの型で重複や移行がしばしば認められます。この中で、「トイレに駆け込まなくてはならなくなる」下痢型がもっとも日常生活上困難を生じるようです。
下痢型の人は、出勤前の朝が大変です。排便が1回で済むことが少なく、大抵3回以上排便するようです。
実際には、便意を感じても便が出ない「空振り」も多いのですが、患者さんは「空振りの便意」か「本当の便意」かの区別はつきません。
通勤電車の中でも、駅ごとにトイレに行く場合さえあります。
トイレにいけない状況を怖れて、停車駅間の時間が長い急行や快速を避ける傾向も認めます。
便意と共に動悸や息切れなどの不安症状を呈する場合はパニック障害との鑑別が必要になりますし、パニック障害を合併する症例も認めます。

原因ははっきりしないことが多い
原因として、腸管自体の病変はないとされており、心理的ストレスが関係していると説明されています。
しかし、はっきりしたストレス因が認められないことも珍しくないですし、症状が数年以上続いているという慢性の方の場合などでは発症当時のストレスが何であったかを本人すら覚えてらっしゃらないこともあります。
そこで、原因探しよりも、症状を維持・悪化させている要因を改善していくことが重要になってきます。
大抵の場合、「症状へのとらわれ」があり、「安全行動(不安を減らすための対処行動)としての必要以上の排便行為」・「回避行動としての外出・乗り物の制限」などが繰り返されて、悪循環が形成されています。
治療では、この悪循環を断ち切ることが有効です。

当院での治療

当院での治療

薬物療法としては、当院では、抗不安薬と三環系抗うつ薬を組み合わせて使用することが多いです。
三環系抗うつ薬は古いタイプの薬ですが、腸管蠕動を抑える働きがあります。
この作用は、うつ病の治療の際は、困った副作用になることが多いのですが、下痢型IBSでは下痢を抑えてくれるありがたい作用となります。
また、漢方薬の併用が有効なこともあります。
薬物療法を補助として、心理学的治療としては、上述した悪循環を断ち切るための行動療法を行っています。

改善例
「20年以上治療を受けることなく経過していたAさん。
平日は出勤前に3~5回は排便しないと家を出られないし、休日はトイレに行けなくなることを怖れて、子供に頼まれても、遊びに連れて行くことが困難でした。
Aさんは「こういうことで受診してもいいのかと・・・」と迷った末に当院にいらっしゃいました。
薬物療法である程度症状を抑えてから、行動療法としては「外出前の排便回数を減らす」という課題を設定しました。
治療開始後1ヶ月ほどで、それまで3回以上だった外出前の排便回数が減り始め、さらに1ヶ月で1回になりました。
同時に、「外出中にトイレに行きたくなったら?」という不安も改善し、休日には子供を連れて外出を楽しめるようになりました。
下痢型過敏性腸症候群の説明図

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