身体症状症(身体表現性障害)

  • 原因不明の体の症状~検査しても異常がないんです。
  • 症状に注目すると悪化する。
  • 自分の感情を表現することが苦手な人に多い。

よくあるケース

Aさんは30代の男性で、原因不明のめまいと吐き気を訴えて受診されました。

30代の男性

症状は1年前に始まり、内科・耳鼻科・脳外科を受診して、いろいろな検査を受けたが異常がなく、精神科へ行くように勧められて、余り気が進まないながら、半年ほど前に他の精神科クリニックを受診したとのことでした。
そこでは、あまり話を聞いてもらえず、「うつっぽい」という診断で、抗うつ薬を出されたそうです。
「半信半疑で薬を飲んでみたところ、意外にも、一時症状が改善した。それはよかったが、毎回診察を受けても、同じ薬が出されるだけで、そのうち薬の効果が弱くなってきたように感じた。でも、それを医者に話しても特に答えがなくて・・・。それで医者を変えてみようと思ったのです」とAさんは当院へいらした理由を教えてくれました。
発症に際して、特にきっかけとなったことは思い当たらないというAさんでしたが、その頃の仕事の状況などをよく伺ってみると、「課長に昇進して3ヶ月あたりの時で、仕事は多く帰りは毎日23時くらいでした。部下にそりの合わないやつが一人いて、正直困ることがありました。でも、良くあることだし、それがそんなにストレスとは別に感じていないんです。あとは、ちょうど風邪を引いて、ちょっと吐いたりしたんですよ。その後から症状が始まった気がします」とのことでした。
前のクリニックで出された薬の効果がなくなった頃のことを聞くと「仕事がちょっと減ったんですよね。ちょっと空く時間ができたり。例の部下との関係は変わらなかったですけど」と言われました。
症状があるときに、何か集中してやらなければいけないことが起こるとどうなるか聞くと「そう言われると、そういう時は、症状がちょっと軽くなったりしますね」と。
他には、「症状のことで気が滅入るし、吐き気がいやなので、好きだったスポーツも控えている」とのことでしたが、興味・関心の低下はなく、意欲自体も保たれていてうつ病の診断基準は満たしませんでした。
私はAさんに「身体表現性障害」という病気が考えられると伝えました。

身体症状症(身体表現性障害)とは・・・

身体症状症(身体表現性障害)とは体の症状を訴えることを中心とした精神疾患です。

心の問題が体に表現されるということでしょうか。
この診断名は大きなグループであって、その中に、身体化障害、心気症、疼痛性障害、身体醜形障害などの疾患が含まれます。
ただし、当院へいらっしゃる患者さんの多くはAさんのような「鑑別不能型」や「特定不能の」身体症状症です。
その特徴をまとめると以下のようになります。
①原因不明の体の症状がメイン。
②抑うつ症状はあったとしても、身体症状に対する2次的な反応と考えられる。
③発症のきっかけとなる、本当の体の不調(かぜとか)がある。
④発症前に環境の変化やストレスの増大などがある。
⑤他のことに集中すると、一時的に症状が軽くなる。反対に症状に注目すると悪化する。
これらに加えて、もう一つ患者さん側の要因として、「感情的に孤立している」という特徴が見られることがしばしばあります。
これは、人間関係がないという意味の孤立ではなく、患者さんが自分の気持ち、特に不安・不満・怒りなどのネガティブな感情を、重要な他者(親・配偶者・恋人・親友)と分かち合っていないということです。
そうしたコミュニケーションのパターンが子供時代の親との係わりからすっと続いている人が多いようです。
こうした背景があると、ストレスによって起こったネガティブな感情がうまく処理されず、ちょっとしたきっかけによって、身体症状として現れてくるようです。
もちろんすべての患者さんが「感情的に孤立している」訳ではありません。
感情表現には問題がないケースの場合は、「症状への注目・こだわり」が非常に強く、習慣化して、日常生活が「症状中心」になっていることが多いようです。

当院での治療は・・・
当院での治療は、身体症状を和らげるための薬を少量使いながら、症状への注目が悪循環を形成していることを説明して、それを断ち切るような工夫をします。
また、重要な他者との間で感情を言葉で表現するように指導していきます。
Aさんは、子供の頃、両親の仲が悪く、母親が苦労している姿を見て育ったそうです。子供心に「母に心配をかけてはいけないと思って、悩みなどがあっても自分の中で処理してきた。
友達ともなんとなく距離をとって、自分の気持ちなどは話さないできました」と教えてくれました
。Aさんに病気のことを説明したところ「自分の症状が何なのか今まで不安でしたが、よく分かりました」と安心してくれました。
結局両親はAさんが20歳のときに離婚してしまいましたが、母親も今は落ち着いて暮らしているとのことでした。
そこで、Aさんに、母親と今まで自分が本当に感じてきたことを率直に話しあうように伝えました。
その上で、薬を使いながら、「体の症状に注目しない生活」を立て直すようにいくつかアドバイスをしました。
2ヵ月後の現在では、身体症状はなくなり、薬を減らす段階へ来ています。
友達にも以前よりも自分の気持ちを表現できるようになったとうれしそうに語っておられました。
身体症状症(身体表現性障害)とは

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