症状は1年前に始まり、内科・耳鼻科・脳外科を受診して、いろいろな検査を受けたが異常がなく、精神科へ行くように勧められて、余り気が進まないながら、半年ほど前に他の精神科クリニックを受診したとのことでした。
そこでは、あまり話を聞いてもらえず、「うつっぽい」という診断で、抗うつ薬を出されたそうです。
「半信半疑で薬を飲んでみたところ、意外にも、一時症状が改善した。それはよかったが、毎回診察を受けても、同じ薬が出されるだけで、そのうち薬の効果が弱くなってきたように感じた。でも、それを医者に話しても特に答えがなくて・・・。それで医者を変えてみようと思ったのです」とAさんは当院へいらした理由を教えてくれました。
発症に際して、特にきっかけとなったことは思い当たらないというAさんでしたが、その頃の仕事の状況などをよく伺ってみると、「課長に昇進して3ヶ月あたりの時で、仕事は多く帰りは毎日23時くらいでした。部下にそりの合わないやつが一人いて、正直困ることがありました。でも、良くあることだし、それがそんなにストレスとは別に感じていないんです。あとは、ちょうど風邪を引いて、ちょっと吐いたりしたんですよ。その後から症状が始まった気がします」とのことでした。
前のクリニックで出された薬の効果がなくなった頃のことを聞くと「仕事がちょっと減ったんですよね。ちょっと空く時間ができたり。例の部下との関係は変わらなかったですけど」と言われました。
症状があるときに、何か集中してやらなければいけないことが起こるとどうなるか聞くと「そう言われると、そういう時は、症状がちょっと軽くなったりしますね」と。
他には、「症状のことで気が滅入るし、吐き気がいやなので、好きだったスポーツも控えている」とのことでしたが、興味・関心の低下はなく、意欲自体も保たれていてうつ病の診断基準は満たしませんでした。
私はAさんに「身体表現性障害」という病気が考えられると伝えました。