適応障害は本人の「気の持ちよう」か?①
最近、当院の患者さんが上司から「適応障害なんて気の持ちようだ。メンタルの医者にかかると病気と洗脳されちゃうぞ」と言われたという出来事がありました。もちろん、私は適応障害が気の持ちようだとか、患者さんを洗脳しているなどと思ってはいませんが、今回は、その上司の方がなぜそのような考えになるのかを「相手の身になって」推測してみようと思います。
1.そもそもメンタル疾患について理解しようとしない。
その上司の方が生き抜いてこられた時代はおそらく、「つらいのは皆同じ。泣き言言うのはわがままだ」という風潮が強かったのかもしれません。目に見える怪我や内科・外科の病気しか認めないという人たちの中には「自分も苦労したんだから、お前も苦労して当たり前だ」という信条を持っている方が多いようです。この手の人たちにとってはメンタル疾患など贅沢病以外の何ものでもない訳です。
2.「適応障害はストレス反応、ストレスは誰にでもあるし気の持ちようで対処できる」と考える。
確かにストレスは誰にもあります。そして、どこまでのストレスに耐えられるか、どこからのストレスなら病気になるかなどははっきりした線引きが出来ません。同じストレスでも、乗り越えていける人がいる一方で、参ってしまう人もいる。となれば、「参ってしまう人が弱いからだ」と決めつけてしまうことは分かりやすい考え方です。
3.「精神科医は患者さんを甘やかして、病気を作り上げて金もうけしようとしている」と考える。
これは私たち精神科医も反省しなければいけない点があります。患者さんを甘やかすかどうかは別にして、きちんとした診察や診療をしていないという批判は全くの事実無根とは言えないからです。話をきちんと聞かずに何でもすぐに「うつ」にしてしまう医者、最初から多剤併用で薬ばかり出す医者、薬物療法以外には何もしない医者・・・そういう医者がありふれていることは他院から流れてきた患者さんの話から明らかです。私も他の医者のことばかり言えません。患者さんの問題解決にいつでも本当に適切な対応が出来ているのか、今後もまだまだ改善の余地はあるはずです。