当院を開設するにあたって、重要なターゲット疾患の一つと考えたのが、社会不安障害です。諸外国での調査では生涯有病率は10から20%と非常に多いにもかかわらず、別名「無視されてきた不安障害」といわれ、ほとんどの患者さんが専門的な治療を受けておられません。それは、本人も単なる「内気」「性格の問題」と考えてしまいやすいことや、治療者側も重要な疾患と捉えてこなかったという理由のようです。
この病気は、強い対人場面での緊張が主症状です。人前で話す・電話をかける・字を書くなどの際に、緊張して、動悸・発汗・赤面などが起こり、また、手や声が振える、頭の中が真っ白になってしまう、といった具合です。この背景には、「他人から否定的な評価(馬鹿なやつ、だめなやつ、退屈なやつ、変なやつ)を受けるのではないか」という怖れがあり、それに捕われているという心理状況があると考えられています。