SAD【症状や特徴】
SAD【症状や特徴】
「会議やプレゼンで緊張して頭の中が真っ白になってしまいます」
「役割がはっきりしている状況はまだいいのですが、同僚と自然に会話するようなアドリブ的な状況が苦手です」
→ 単なる性格ではなくて、社会不安障害という病気かもしれないですよ。人によっては、治療すると人生が変わります。
【どういう病気か】
・人前緊張を主症状とする病気です。
・一生涯で約10%以上の人がかかる病気です。
・多くの人は10代前半に発症します。
・自然に治ることは少なく、慢性化します。
【症状や特徴】
・初対面の人や複数の人の前で注目を浴びるかもしれない状況で、不安・緊張感が強くなります。
・「何かまずいことをしてしまうのではないか?」「恥をかくようなことになるのではないか?」と思い人前で緊張します。その背後に、「相手から否定的な評価(つまらないやつ・ばかなやつ・へんなやつ)を受けるのではないか?」という恐れがあると考えられています。
・また、「自分が緊張していることが相手にばれてしまうこと」も強く恐れることが多いようです。
・家族や慣れた人は大丈夫な場合もあれば、すべての人に対して緊張する場合もあります。
【メカニズム】
・多くの不安障害は、「苦手な場面を何度も経験すること(曝露)」で改善することが多いのですがSADではそうならないことが多いようです。これには以下のことが関係あると言われています。
・緊張場面で、患者さんは「観察者の視点」で自分を捉えてしまいます。例えば、大勢の人の前で、話をするときに、自分が周囲の状況を観察している(「場の視点」)のではなくて、周りの人から自分がどう見えているかということに集中してしまうのです。そして「見られている自分」の自己像を頭の中で作り上げます。この自己像は、自分の身体感覚を材料として作り上げられます。例えば顔が熱くなる感じを覚えると「真っ赤な顔をしている自分」を、わずかでも手が振るえている感覚があれば「ぶるぶると手が振るえている自分」をイメージしてしまう訳です。
・この自己像は、ほとんどの場合、事実通りではなく、患者さんの恐れを反映して歪んでいます。赤面恐怖の場合は「実際にありえないくらい赤くなっている」とイメージしてしまうのです。
・ですから、この自己像に意識を集中すると緊張は悪化します。また、この自己像に意識が向かうと、「場の視点」が持てなくなり、周囲からのポジティブな反応も見逃してしまいます。その結果、曝露が曝露としての効果を失い、「苦痛な失敗を重ねただけ」となってしまいます。
・曝露の効果を失わせるものとして、もう一つの重要な要素は「状況の中での安全行動」です。うつむいてアイコンタクトを避ける、小声で喋る、といった実際の行動から、「頭の中での行動」まであります。「頭の中での行動」とは、話す内容をリハーサルする、喋っている内容を逐一チェックする、それを記憶しようとするなどです。これらも「場の視点」を邪魔するので有害です。
・また、多くの患者さんは、緊張場面が予想されると、何日も前からそのことを考えて不安に苦しみます。その間に、うまく振舞えなかったらどうしようとか悩み、少しでも不安を下げるためにリハーサルをしたり頭の中でシミュレーションを行ったりします。しかし、それは、自分の緊張という自意識に集中する結果となり、かえって不安は増大します。さらに、緊張場面をなんとかやり終えた後でも、「観察者の視点」で記憶した自分の振る舞い(事実より悪く歪んでいる)を反芻して、「うまく振舞えなかった」とか「また恥をかいた」とか考えて、その出来事が「自信を失う出来事のリスト」に書き加えられてしまう訳です。