発達障害 大人になってから問題となるケース②
発達障害 大人になってから問題となるケース②
大人になってから診断される発達障害の患者さんは、大きく分けて、注意欠陥多動性障害(ADHD)タイプかアスペルガー症候群タイプかのどちらかになります。
ADHDタイプの患者さんは、対人接触は比較的良好で、表情や口調も割と自然です。
しかし、診察室に入ると着席する前から話し出したり、早口で、こちらの話が終わらないうちに返答を述べ始めたりします。座っていても、手や足を細かく動かしていることも良く見かけます。
子供のころから忘れ物や失くしものが多かったと言い、成人してからも、財布や携帯など大事なものを繰り返し失くしていたりします。彼らが困るのは、なんといっても、仕事で不注意によるミスを繰り返してしまうことです。
やや単調で、同時にいくつかのことをやらなければならないような場合、最もミスが発生しやすい傾向があります。
そのため、上司や先輩から何度も叱責され、同僚からも冷たい目で見られてしまう・・・という状況で自信を無くしてしまうことがままあります。
しかし、ADHDタイプの人には近年有効な薬物が使えるようになり、うまくいくとかなり症状を軽減できるようになりました。また、現代は電子機器が発達していますから、スケジュール管理などをしやすいスマホのアプリなどを上手に使用することで、適応力の改善を図ったりもします。
アスペルガー症候群タイプの人は、どことなく対人接触がぎこちなく、不自然な印象を与えることがあります。子供のころから集団生活や友人関係で浮いてしまうことがあり、いじめられた経験がある人が多いようです。
不注意によるミスはそれほど多くないのですが、何かに過集中してしまうと、他のことが見えなくなってしまうことがあります。
言われた話を理解するよりも、文章に書いてもらったものを読むほうが理解しやすいという視覚言語優位の情報処理特性がしばしば見られます。
アスペルガー症候群タイプの人は、自分の得意な仕事をコツコツやらせてもらえる環境だと、非常にクオリティの高い結果を出せる一方で、他部署との対人折衝や部下の気持ちを汲みながらマネジメントするような課題に直面すると全く立ち行かなくなってしまうことがあります。
そのせいでうつ病や不安障害のような症状を呈することが多いようです。アスペルガー症候群タイプの場合は、それ自体に有効な薬物はなく、本人の特性を理解したうえで環境の方を本人に合わせていく環境調整が主体になります。
ただ、これを行うにはどうしても職場側の理解と協力が必要なのですが、いまだに「発達障害」という診断は偏見が強く、職場に伝えることに慎重にならざるを得ない現実もあり難しいところです。