薬物療法について 抗不安薬
抗不安薬について。抗不安薬は、その名のとおり、不安・緊張を抑える薬です。代表的なものにベンゾジアゼピン系薬物(BZP)があります。その他、作用機序がBZPと異なるものとして、セロトニン1A作動薬のセディール、抗ヒスタミン薬であるアタラックスなどがあります。セディールは効果発現に時間がかかるが副作用が少ないことから軽症・高齢の方に使われるようです。アタラックスは最近の先生方はあまり使わないようです。BZPはパニック障害をはじめとする各種の不安障害や不安症状の強いうつ病の場合などに用いられます。BZPは効果発現が早く、患者さんは服用して効いたという感じが得られやすい薬です。パニック発作のような強い不安感に襲われたときに、薬を飲めば落ち着くということは確かに利点です。また、うつ病の治療では抗うつ薬が主体であることは当然なのですが、一般に抗うつ薬は患者さんが効果を実感できるようになるのに日数がかかるので、初めのうちは、BZPで不安を抑えてあげると患者さんが治療から脱落しにくいと言われています。一方で、BZPの副作用としては、眠気、脱力感・ふらつき、集中力低下などが多いようです。特に、高齢の方は、ふらつきから転倒して骨折などが起こりえますので、投与に注意が必要です。また、集中力の低下から、記憶力低下のような症状を示すことがあり、認知症のような状態を引き起こすことがあります。比較的若い方の場合は、転倒や認知症様症状のリスクはそれほど高くないと思いますが、依存の問題があります。「効果を実感しやすい」という利点には、「依存しやすい」という欠点を伴うのです。BZPの中でも、作用時間の短い(正確には血中半減期が短い)薬物は依存しやすいといわれています。そのため、長期にわたり漫然と使用しないことや、できるだけ頓服として使用することが勧められています。薬が切れてくる頃になると不調になって、どうしても薬をやめられない場合は長時間作用の薬に切り替えてから、徐々に減らすとうまくいくことがあるので、主治医の先生と相談すると良いでしょう。