気分安定薬(2)
前回は双極性障害の治療薬である気分安定薬について書きました。今回はそれらの副作用についてです。
炭酸リチウム(リーマス)は、通常使用量では眠気やふらつきなどはほとんど生じません。その意味では飲みやすい薬です。比較的良く見られる副作用は、手の振るえと下痢です。手の振るえは激しくはないのですが、時に作業に支障が出る場合があります。薬を減らすことで対応できない場合は、β遮断薬という薬で軽減することが出来ます。下痢は、ほとんどの人では問題になりませんが、まれに薬をかなり減らさないと治まらない方がいます。吐き気も頻度は多くないですが、時に見られる副作用です。美容上問題となる副作用として「にきび」があり、特に女性の場合、服薬拒否につながるため注意が必要です。体重への影響は、増加と減少の両方があるようです。長期的な副作用としては腎機能・甲状腺機能を低下させる場合があります。このため、服用中は定期的な採血が必要になります。しかし、リーマスの最も注意すべき副作用は中毒です。故意に大量に服用しなければまず安全ですが、下痢による脱水や、解熱鎮痛剤・ある種の降圧薬との併用などで、血中濃度が上昇し中毒を起こす可能性があります。運動失調やけいれん、意識障害、心機能抑制など重篤な中毒症状が起こりえますので、服用中の方は、適切な水分摂取(普通の生活なら問題ない)や併用薬に注意が必要です。
バルプロ酸(デパケン・セレニカ)は、眠気やだるさを訴える方が比較的多いようですが、容量を徐々に上げれば次第に慣れが生じるようです。文献的には胃腸症状が副作用として最も頻度が高いようですが、当院ではあまり経験はありません。20%の方に体重増加が認められるという報告があります。毛髪変化・脱毛が見られることがありますが、多くは軽度で一過性のようです。爪がもろくなるような変化がまれに見られます。炭酸リチウムと違って、中毒をそれほど気にしないで使えるのは利点であり安全な薬と言えます。ただし、まれにですが重篤な副作用として、肝障害、高アンモニア血症、膵炎、造血障害などがあり、やはり、定期的な採血は必要です。
カルバマゼピン(テグレトール)については、当院ではほとんど使用しないため省略します。