発達障害 大人になってから問題となるケース①
発達障害は脳の発達に何らかの問題があり、その働き=特性に偏りが生じた状態です。得意なことと不得意なことの差が激しいという特徴があり、不得意なことは以下の領域に出やすいようです。
①社会的コミュニケーションの障害 言葉のやり取りよりも、いわゆる暗黙の了解とか、状況に応じた臨機応変な態度など、非言語的コミュニケーションがうまく理解できない。冗談や皮肉を言葉通り真に受けてしまう。自分ではていねいに話しているつもりでも相手から失礼だと言われたりする。
②注意力の調節障害 注意力の持続、切り替えなどがコントロールできず、不注意によるミスを繰り返したり、一方で、一つのことに過度に集中しすぎてしまったりする。
③自己コントロールの障害 時間管理や金銭管理がうまくできず、夜遅くまでゲームをして朝起きられなくなったり、衝動的に買い物をして借金を背負ったりする。しかも、一度の失敗で懲りて再学習するということができない。
④こだわりが強く、融通が利かない あまり本質的ではない些細なことにとらわれて、こだわってしまう。例えば、書類の出し方のような形式にとらわれて、急ぎの例外的な事態が生じても柔軟に対応しないため周囲から嫌がられてしまう。
他にもいろいろあります。発達障害の人の特性の偏りは人により様々なので、ここに挙げたものはうちのクリニックでよく見かける代表的なものにすぎません。
障害の程度が軽ければ学生時代にはそれほど問題とならないのですが、職場という大人の世界に入ってから不適応を引き起こしてしまいます。さらに、より障害が軽いケースでは、部下として自分の仕事をコツコツやっているうちは優秀だったのに、管理職になって対人折衝が増えてから破綻してしまったという場合もあります。
発達障害が背景にある適応障害の治療では、まず患者さん本人が自分の脳の特性に偏りがあるという現実と向き合うことが必要です。患者さんの中には、原因を周囲に押し付けて過度に多罰的になったり、逆に「自分は何をやってもうまくいかない」と過度に自己評価を低下させたりしてしまう人がいますが、どちらも不毛です。
ご本人の障害受容がスムーズにいくように援助するのが治療者の腕の見せ所ですが、現実には難しいことが結構あります。発達障害の人の特有のこだわりの強さからこちらの言うことを聞いているようでも、実は自分の言いたいことを言っているだけ・・・となりやすいのです。