クリニック通信

病気か甘えか?②

病気か甘えか?②
職場で過重労働があり、周囲のサポートもなく参ってしまう・・・こういうパターンの適応障害の方が結構います。
うつ病というほど強い落ち込みが持続しているわけではなく、職場を離れれば比較的元気になり友人といるときなどは普通に振舞えたりするので、本人も周囲も「甘えているだけではないか?」と不安になることがあります。
「周りも頑張っているから自分だけ頑張れないのはおかしい」と考えたり。本来、辛い状況であれば、その状況をどのように打開するか、結局自分はどうしたいのか、ということをはっきりさせなければ解決できません。
しかし、適応障害になってしまうと脳の機能が落ちて、この「自己決定」はほぼできなくなります(例外はあります)。
休養し、規則正しい生活と自分の好きな活動をさせると、徐々に自己決定する力が戻ってきます。大半の方は薬を使わなくても回復します。
すると、問題が整理されて、自分がどうしたいかがはっきりしてきます。
過重労働のせいだと思われていたことの裏に、本当はもっと違うやりたいことがあったことに気付くこともあります。
こういうプロセスを見ていると、やはり「病気として扱う」ことが必要かつ有用に思います。
もしも「甘え」とするなら、参っている状態でも自分の問題に向き合うように促し、自分で解決するように強いるということになるのでしょう。
しかし、実際にはそれはうまくいかずただ混乱するだけのことが多いのです。
当然、ストレスがかかっても皆が病気になるわけではないのですから、その人のストレス対処能力には何かしらの問題があると考えるのは当然ですし、その分、本人にも責任はあると言えます。
でも「甘え」と断じることはそこに向き合うことにつながるとは言えません。当院ではある程度回復したら、将来繰り返さないためにはどうしたらよいか、「振り返り」という作業を通して、ご自分の問題にも向き合っていただいています。ただ、それは行う時期が大事で、参っている最中にはできないことが多いのです。

それでは「失恋してつらい」という理由で受診された場合などはどうでしょう?医療の問題ではないことは当然です。
それでも、こんなことで受診するな!という態度を取られたらもっと落ち込んでしまうでしょう。
叱責されて立ち直れる人ならそもそも医療機関に助けを求めませんし、辛いときに叱責されて奮起できるような人は実際にはごく少数なのではないでしょうか。
私は、じっくり話を聞いたうえで、「病気ではないので治療では解決できない」と告げます。
しかし、眠れなくて生活や仕事に支障が出ているなら、そのことには薬で対処できると保証してあげます。その人が持っている人間関係のサポートを受けるように促します。
そして、つらいだろうけど仕事にはきちんと行くように話し、その方が結局は回復が早いと説明します。「病気」と認めることはしないけれど、「甘え」と断じることもせず、できることとできないことを伝えて、本人がつらさを乗り越えやすくするお手伝いを、少しだけですが、させてもらうという感じです。

日本橋メンタルクリニック

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