生活習慣病としての気分障害①
生活習慣病としての気分障害①
うつ病や双極性障害といったいわゆる気分障害と呼ばれる疾患は、現代人の生活習慣とも密接に結びついている面があり、最も大事なものはおそらく、睡眠時間や睡眠覚醒リズムの問題であることを前回お伝えしました。
今回は、「うつ」と運動の関係についてお伝えします。
良質な睡眠を十分な時間取ることが大切なのは異論がないところだと思います。
しかし、日本人の平均睡眠時間は過去50年間で1時間減っているという統計があります。
ヒトという種の生物学的な性質が変わるには50年というのは短すぎますから、これは社会的な要因が大きいと言えましょう。
要するに、我々現代日本人は本来体が必要としている分よりも平均1時間短い睡眠で何とかやっているということになります。
毎日1時間睡眠不足が慢性的に続けば脳の機能に影響を与えることは十分に考えられます。
事実、1週間だけ睡眠不足の状態になっただけで日中の作業能力はテストで有意差がつく程度に低下したという報告もあります。さらに、注意すべきなのは、この実験ではその後3日間十分な睡眠をとらせても、作業能力が元のレベルに回復しなかったということです。
働く人の多くが平日は睡眠不足でも、土日にため寝して取り戻せると考えていますが、科学的な実験による結果からは2日どころか3日でも取り戻せないということらしいのです。いつの間にか知らずに脳の疲労が蓄積していくようなことが起こっているかもしれません。
また単純な睡眠時間よりも、睡眠の質やリズムも重要です。
我々の睡眠リズムはメラトニンという脳内物質で調整されていますが、夜間に強い光を浴びてしまうとメラトニンの分泌が悪くなってしまうのです。現代の街中は場所によっては夜中でもかなり明るいですし、夜遅くまで仕事をする、テレビゲームをする、スマホの画面で作業をするという行為でも強い光刺激を受けることになります。
月明かりくらいしかなかった時代に比べれば、我々の体はメラトニンがかなり分泌しづらくなっているかもしれません。
メラトニンの分泌が悪くなるとリズムが崩れるのに加えて、疲労回復に必要な深い睡眠が減少することが分かっています。
現実に、当院に受診される双極性障害の患者さんは発病前に過重労働の時期があって、夜遅くに短い睡眠だけとるような生活を長く続けていた方が本当にたくさんいます。
睡眠の問題は発病にからんでいるだけではなく、治療上も大切です。うつ病や双極性障害の治療では、生活習慣を見直し、睡眠覚醒リズムを整え、可能な限り質の高い睡眠を十分に取ることが必要です。
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