クリニック通信

治療が行き詰ったとき その2

 

前回の続きです。

3.課題遂行のためのテクニック
薬物療法以外で、できることは、前述したように目標を定めて課題を実行することです。
「技法」としては、考え方や行動のクセを変えるためなら認知行動療法、他人との関わり方やコミュニケーションの問題なら対人関係療法といったテクニックがあります。
目標や課題がどのようなものかに応じて、それらを使い分けることができます。
認知行動療法や対人関係療法がどのようなもので何をするものなのかは、課題が決めればきちんと治療者から患者さんに教えることができます。
しかし、そういう技法・テクニック以前に大事なことは、良好な患者-治療者関係です。
その中で、目標や課題を明確にして実行可能なやり方を工夫していけば、治療がうまくいく可能性は格段に上がります。
結局、これまでのことから明らかなように、課題を決めたり実行したりするのは患者さんが主役なのです。
現状が辛いのだとしたら、(当然好きで続けているわけではないにしても)患者さん自身が辛くなることを続けているのであって、人は自分を変えることでしか良くならないのです(変えると言っても現在の自分を「否定する」のではなく、「広げる」ということです)。
医者は患者さんが自らを変えていくお手伝いができるだけに過ぎません。

 

 

4.患者-治療者関係を見直してみるようにお願いする
もしも、これまで述べてきたことを患者さんにお伝えして、患者さんが治療者の言わんとすることをスムーズに理解できて、頑張る気になれそうなら、その患者-治療者関係は良好で、何も問題ありません。
ところが、一方で、そんなことを言われても困る、役に立つ気がしない、何となく不愉快だ、というような感じに患者さんがなるとしたら、その患者-治療者関係がうまく行ってないことを示しています。
それは、治療者である私が患者さんの気持ちをちゃんと聞けておらず、患者さんが私から尊重されている感じがしていないのに、私が患者さんに要求ばかりしている可能性が大きいということを意味しています。その場合は、目標や課題の話の前に、私は患者さんが私に対して感じている不満をきちんとお聞きしなければなりません。
言いにくくても率直に不満を話してください、と伝えます。そのやり取りを通して、患者さん自身が、私を自分の治療者として信用に足る存在か、共にやって行こうと思えるかを値踏みしてみるように重ねてお願いします。私は全然完璧な人間ではありませんし、治療者として未熟な面もまだまだあります。
きっと自分の知らないところで患者さんをがっかりさせたり、いらだたせたりしていることがあるのだと思うというようなことも話します。そして、それでも、私は患者さんが困難を乗り越えて、医療を卒業できるようにお手伝いしたいと思っているということを強調します。

このようなやり取りを患者さんと行って、治療関係を洗い直し、治療方針を立てなおそうと努力をします。
その結果、経験では半数以上のケースでは何らかの状況打開に至るようです。その一方で、残りのケースでは残念ながら患者さんの納得が得られず、治療中断や転院希望に至ります。
ただ、それでも、うまくいかないままズルズルと治療を続けるより、新たな治療者とやり直した方がいいのかもしれません。

日本橋メンタルクリニック

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