ストレスチェック制度の今後
先日、東京大学で職場のメンタルヘルス専門家養成講座の同窓会がありました。私は第一期生ですが、今回は4期生が加わり、さらに大きな会として発展しています。
そこで、主任教授の川上憲人先生からストレスチェック制度が今後どのようになっていくかについての予想についてお話がありました。川上先生は「どこまで予言が当たるかはわからないけど」と、控えめに話してくださいましたが、私は大いに実現しそうだなあと思いました。
一つは、現行のストレスチェック制度では組織分析に基づく職場環境改善については「努力義務(やることが望ましいが、やらなくても罰則はない)となっていますが、これがおそらく今後「義務(やることが必須になる)化」されるだろうということ。
もう一つは、現在、従業員が50人未満の事業所についてはストレスチェックを行う必要がありませんが、これもおそらく今後義務化されていくだろうということです。
どちらも、働く人の健康を守るうえでは当然の発展と言えるでしょうが、事業者の負担は増えるため、実際には真面目にやるところと、形だけ最低限にやって済ますところと2極化していくのではないかと、私は予想しています。また、医師面談をきちんと行って、職場に結果をフィードバックできる産業医がどのくらいいるのかも心配な点です。というのも、今回のストレスチェック制度の施行に際して、ストレスチェックの実施者になるのが嫌だからという理由で辞めてしまう産業医が結構いるという話を耳にするからです。
ストレスチェック制度はうまく機能すれば従業員の心の健康増進、生産性のアップにつながることが期待できる可能性を秘めていますが、それも運用する事業者トップ層の考え方や、かかわる産業医の質によって有益なものとなるかは大きく左右されそうです。