双極性障害に伴う過食の治し方②
②過食について理解する
過食はなぜ止めにくいのか?それは依存性薬物と同じ脳内メカニズムがあるからです。それは「すぐに効果が得られる行動や物質は脳内に『止められない回路』を形成する」ということです。過食の効果はもやもやした気持ちを和らげることです。これは過食を始めるとすぐに効果が現れます。過食をして3時間後にやっと気分が和らぐなら誰も過食が習慣化することはないでしょう。こうした効果はアルコールで5~10分、たばこではなんと7秒です。効果発現が早いものほど「止められない回路」を形成する力が強いですが、60分以内に効果があるものは習慣性が生じやすいと言われています。
いったん「止められない回路」が形成されると、回路が刺激されたときに目的(過食や依存性物質)にむかう強力な欲求が生じます。これを自力でコントロールするのは非常に困難。ただし、これはいったん回路のスイッチが入ったら途中で止めるのは至難の業という意味であり、回路のスイッチを入りにくくする工夫は可能です。つまり、過食行動がそもそも始まらないように環境を調整することが大事になります。過食しやすい状況、空間、時間、などにさらされるだけで回路のスイッチが入り、強い過食欲求が始まってしまうことがあります。例えば、余計な食べ物がいつでも手を伸ばせば手に入り、自由に食べられる状況では過食を止めることは難しいのです。自分が過食しやすい状況を整理してそれを避けることが必要です。実際、多くの人は誰かと楽しく食べるときは過食しないで済みます。
吐くという行為も過食を止めにくくします。吐くことも「止められない回路」を形成します。効果は体重増加がキャンセルされるように感じるということです。そしてこれは嘔吐すればすぐに生じる効果だからです。ただし、実際には体重増加は長い目で見ればキャンセルされないどころか、かえって体重は増えてしまいます。それは、吐くことで過食への心のハードルが下がってしまうこともありますし、インスリンの過剰分泌に続く異常な空腹感が次の過食スイッチを入れてしまうということから必然的に起こります。ですから、過食を止めたければ、まず、嘔吐を止めなければなりません。過食後に嘔吐をしにくい環境、例えば人ごみとか、に行くことが一番有効です。また、嘔吐の衝動は時間が経つと低下しますので、吐くまでの時間を引き延ばすことが有効です。5分から始めて徐々に伸ばすのです。待っている間は、嘔吐がしにくい他の行動をやります。どういう行動が使えそうかを前もってリストアップしておくといいでしょう。
食べる内容や食べ方にも気をつけましょう。炭水化物などの糖質はインスリンの過剰分泌を引き起こし、次の過食を誘発しやすくするだけではなく、太りやすくなる原因となります。インスリンには食べたカロリーを脂肪にして蓄える働きがあるからです。これを防ぐためには、タンパク質と脂質をきちんと取ることです。脂質はカロリーが高いと思われがちですが、満足感を得やすく、かえってトータルのカロリーは抑えやすくなります。またインスリンの過剰分泌を引き起こさないので、太りやすい体にはならないのです。食べ方としては、最も大事なのは、どんなに過食しても規則的な3食の食事は決して抜かないことです。双極性障害の治療として正しいことをしない限り、結局過食も治せません。「そんなに食べたら太ってしまう」という考えや不安は極端な思考と感情そのものです。振り回されないようにしましょう。過食をしてしまうときも、きちんとした食事として扱いましょう。きちんと盛り付けたりセッティングして、BGMを流したり、食事として摂りましょう。どんなに、途中から早食いになってしまうとしても、ぎりぎりまでゆっくりよく噛んで味わうように練習しましょう。そうすることで、トータルの摂取カロリーを抑えやすくなります。